新型コロナウィルスに関する和楽器の取り扱い方法
~安心してお使いいただくために~
一般社団法人 全国邦楽器組合連合会
令和 2 年 8 月 15 日改訂
一般社団法人全国邦楽器組合連合会ではこのたびの新型コロナウイルス対策として楽器の取り扱いに ついての所見をまとめました。楽器の消毒は「日頃の注意点」を守って頂ければ十分だと考えていま す。
また楽器を消毒する際においてその消毒薬はたくさんの種類があります。商品としては 100 以上もある と言われている中から楽器に最も適した消毒液を探し出すことは難しい上に対コロナの消毒液の情報も 日々錯綜しています。このような状況の中、一般的に利用されている「アルコール系(消毒用エタノー ルなど)と塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)」に絞って全邦連の見解をお知らせ致します。 尚、新しい情報が入りましたら随時この「和楽器の取り扱い方法」は更新していきます。
お稽古前とお稽古場について
・楽器を使用する前にハンドソープ・石鹸で手洗いし水でうがいをする。
・出入り口に手指消毒液を配置する。
・ドアノブやふすまなどの取手を消毒する。
・練習場の換気をこまめにする。
・指導者、生徒のマスク着用。
・グループレッスンをする場合は指導者、管理者の判断のもと3密を避けて行う。
箏・三味線本体及び箏爪や箏柱ならびに三味線のばちや駒等の消毒
・無水エタノールは使用しないで下さい。
・手指を消毒用エタノールで拭いた場合は充分に乾いてから楽器に触れて下さい。
・付属品等で象牙、鼈甲、水牛、舎利などの消毒についても消毒用エタノールを布に含ませよくしぼってからやさしく拭けば大丈夫だと思われます。
・箏の爪輪についてですがそもそも爪は個人で持つものですから通常は「日頃の注意点」をお守り頂ければ問題ありません。
箏爪を複数の人が使う場合の注意点
① 爪輪を指にはめるときは抜けにくくするために指を水で湿らす、舐める、玉子の白身を付ける等はし ないで下さい。
② 爪を使い終えたら次の人のために、消毒液(アルコール系、塩素系)を布に少しつけ、軽くふき、完全 に乾かして下さい。除菌シートの利用も可能です。
箏・三味線の弦
〇三味線・胡弓・三線や箏の弦の基礎知識
和楽器に使われている弦の素材は絹と合成繊維の 2 つに分けられます。
合成繊維とはナイロン、ポリエステル、テトロン(帝人と東レの商品名)などのことです。
すべての素材の弦の消毒に共通する消毒法
①消毒液(アルコール系、塩素系)は布等に湿らせ軽く拭いて下さい。強くこすらないでください。
②完全に乾いてから演奏して下さい。
③消毒液を直接または大量に付けないで下さい。液を多く含んだ除菌シートは絞って利用して下さい。
すべての素材の弦の消毒に共通する注意点
①特に絹は塩素系には弱いので使用しないで下さい。
②アルコール系消毒液は素材(合成繊維)や糸のコーティング面を弱め、演奏する指の感覚に違和感をも たらすことがあります。
尺八、篠笛の消毒法
笛は個人で持つことが多いので通常は「日頃の注意点」をお守り頂ければ問題ありません。
しかし複数の人で使う場合はもう少し注意が必要です。
①消毒液(アルコール系、塩素系)は布等に湿らせ、軽くふいて下さい。除菌シートのご利用をお勧めしま す。(内部に液が垂れにくいため)
③完全に乾いてから演奏して下さい。
尺八、篠笛の消毒に関する注意点
①消毒液を直接または大量に付けないで下さい。内部の仕上げ面を痛める可能性があります。
②アルコール系消毒液は表面や内部のコーティング面を弱め、演奏に支障をきたすことがあります。
太鼓
皮、胴、カン
・ 消毒用エタノールを布に含ませてから拭いて下さい。
拭き終わったら次に乾いた布で乾拭きしてください。
・皮に湿り気がある場合は乾いてから打って下さい。
ばち
・木製なので演奏後汗を吸って湿りますので十分乾燥させてから消毒用エタノールを布に含ませて拭いて下さい。出来れば太鼓のばちは個人持ちの物が好ましいです。
家庭用次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤を使用する際の希釈について
・特に汚染されている場所や衣類には 0.1%(1000ppm)程度の濃度(原液 10ml に対して水 500ml)
・日常的に使う物質は 0.02%(200ppm)程度の濃度(原液 2.5ml に対して水 500ml)
・希釈の際には手袋を着用し十分に換気した環境で行って下さい。
・希釈した消毒液でうがいや手指消毒はしないで下さい。
次亜塩素酸水について
次亜塩素酸水での手指消毒については令和 2 年 4 月 10 日の政府答弁にて「その有効性が確認されて ないため石鹸やハンドソープで丁寧に洗うことを推奨する」となっています。
また、6 月 26 日現在での経産省、厚労省、消費者庁の「次亜塩素酸水」の使い方・販売方法等につい ての資料(https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200626013/20200626013-5.pdf)によると一定の 条件で有効性が確認されましたとするものの、消毒・除菌等の有効性の根拠が明確でないものが多く、さらに、有効性試験を行っている場合でも、国際規格(ISO)、国家規格(JIS)、団体規格等で規定されている 評価法を用いていないものがあるほか、結果の表示にあたっても、試験実施時期、用いた手法、試験機 関、結果等が明示されていない場合があるとしているので充分注意して購入して下さい。
消毒用エタノールについて
消毒用エタノールの濃度は 70~83%の物が手指消毒に適しています。アルコール濃度 70%が最も殺菌 力が高いとされていますが消毒用エタノールは品薄状態となりました。厚労省ではやむを得ない場合 については高濃度エタノールをその代替品として認め、また消防庁や国税庁も規制を緩和することで 酒造会社が濃度 60%台以上の酒類を販売するようになりそれらも手指消毒に使うことが出来るように なりました。(酒造メーカーにより濃度は違います)
漆部分の消毒について
和楽器には漆を使った部品や部位があります。 漆の専門家が消毒用アルコールを使うのはカビを除去するためで消毒目的ではありません。むしろ一般 の方が誤って使うと漆が変色したり劣化する恐れがあります。 合理的な考え方としては演奏前、演奏後の手指消毒を必ずおこない、漆部分が汚れたときは中性洗剤を 水で薄めてガーゼなどの柔らかい布に湿らせて拭き取り、その後乾いた布でよく拭いて乾燥させるのが いいと思われます。日光に当てたり、ドライヤーで乾かすことはやめて下さい。漆が痛みます。
その他のお知らせ
- 2024年6月5日清流の国ぎふ総文2024開催のお知らせ
- 2024年1月11日「あくるひ」コンクール!結果発表
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- 2023年10月22日岡山市で11/3(金・祝),4(土) 伝統的工芸品月間全国大会での邦楽演奏
- 2023年10月20日11/5(日)きものサローネで和楽器アンサンブルあいおいの演奏が行われます